

発達教育実践分野
特別支援教育研究室
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特別支援教育研究室では,発達障害やさまざまな困難(不登校・貧困・虐待など)により,生きづらさを抱えた子どもとその家族への福祉と協働できる学校教育のあり方を研究します。
教育を中心としつつ,幅広く関連領域(福祉・医療・司法)へも視野を広げ,子ども理解や個をとりまく集団・環境など,関係性の支援や指導のあり方について学びます。具体的には,小・中・高校の通常の学級や特別支援学級,特別支援学校に加え,学童保育,フリースクール,放課後等デイサービスといった制度や施策・支援の他,家族関係や地域社会が研究・探求するテーマになります。
授業では講義・演習に加え,地域の子どもの活動の場へも参加し,子どものねがいを汲み取り寄り添う視座を持つ教師を育てます。
■こんな場所に出掛けています
小・中・高校,特別支援学校,定時制高校,少年院,不登校支援事業,児童相談所,児童心理治療施設…
※特別支援教育研究室では、1-2年生全員が、月に1回程度、児童養護施設を訪問して、子どもたちと学習やレクリエーションに取り組んでいます。
■こんな特徴ある学びをしています
不登校支援施設での実習,学習支援ボランティア,学校支援員,附属特別支援学校での参与観察。大学教員が実施する教育相談・カンファレンスに同席することもあります。
■こんな卒業論文があります
- 不登校及び不登校傾向にある生徒のキャリア教育・進路指導の検討ー校内フリースクールの取り組みから
- 不登校児のきょうだいを支える他者の関わり―きょうだいの思いに基づいたリーフレットの作成
- 自閉スペクトラム症者から見える学校―当事者の手記からの考察
- 交流および共同学習の在り方の検討ー共同学習の目的と教科等のねらいの達成に着目して
学びの流れ
1年次
教養科目やアカデミックスキル、社会科学入門などの科目を履修し、大学生としての学び方やものの見方・考え方の基礎を学びます。
■合言葉…「教室はまちがうところだ」「答えは一つじゃない」「自分の経験を一般化しない」
児童養護施設を訪問しての学習支援、レクリエーション活動。高校や不登校児支援施設での学習支援ボランティア等。
2年次
「学校教育の実践と省察」(旧、教育フィールド研究)などの学校現場で学ぶ内容と学内で学ぶ科目(座学)をつなげて理解し、学校教育の専門を学びます。
卒業論文作成につながる「研究方法」などについて学びます。
附属特別支援学校での臨床実習(2日間)、社会福祉施設等見学(1日)の研究室独自の取組があります。



3年次
学校教育に関する専門的な学びを深めるとともに、小学校での教育実習に参加します。
ゼミに分かれ、卒業論文作成を始めます。
空き時間に小・中学校を訪問して、学習支援員として活動します。
4年次
希望者は、特別支援教育実習、副免実習(中学・高校)へ参加します。教員採用試験他、卒業後の進路実現に向けた取り組みの他、大学生としてのまとめである卒業論文を完成させます。
専攻科目【特別支援教育臨床Ⅱ】
附属特別支援学校での研修を終えての感想
Aさん
かねてから特別支援学校に通う友達が多い私にとって、今回の訪問は彼らがどのようなことを学び、またどのような教育を受けてきたのか、その一部を知ることができる貴重な機会となった。
最も学んだことは教員の行動や言動にはすべて意図があるということである。今回の研修では、子どもたちの様子と教員の意図を観点として参与観察を行った。例えば、朝礼の時間では、進行に必要なモニターやタブレットを教員の手助けなしに協力して用意する子どもの様子、係活動では子どもたち一人ひとりが違う役割を自らこなしている姿を見ることができた。
研修前の印象では、子どもたちのしたいことをできるだけ助けるということが教員の役割であると認識していたが、実際はほとんど真逆で、子どもたちの積極的な行動を促すために教員のサポートは最低限にとどめていることが分かった。
これらの取り組みは、1学年当たりの人数が少なく、担任やその他作業に関わる教員が子どもたちの様子を細かい部分まで把握できることによって実現できるものなのではないかと推測することができる。この推測より、特別支援教育は子どもたちの人数が比較的少ないへき地・小規模校ではその強みを生かして行うことができる教育なのではないか、という新たなアイデアにたどり着くことができた。
Bさん
附属特別支援学校では「仕事」「暮らし」「余暇」が三本柱となっていて、それぞれの目標に応じて作業学習、生活単元学習、休み時間が設けられている。特に印象強かったのは「余暇」の部分で、給食を食べてから帰りの回までの子どもたちが自由に使える時間がかなり長いという感想を抱いていたが、それも「自由な時間を自分でコントロールする」練習であるとカンファレンスの際に先生から伺い、時間割の構成にも意図があることを実感した。
私の配属は高等部であったが、国語や算数などといった教科教育が無く、作業学習が多かったことに、「字を書く練習や、数字について学ぶ機会はないのかな」と疑問を抱いていたが、生活単元学習の際に、自分の活動をポスターにまとめて発表するなどの活動を通して自然と読み書きについても学習しているということを教わり、これが「合わせた指導」なのだと学んだ。
作業学習の際には、それぞれの班の実態や、障害の重さに合わせて指示の仕方を変えていることに気づいた。障害が重度の子どもが集まっていた班では、教師の声が子どもにとっては一番うるさいと感じさせてしまう。そのため、言葉で指示をするのではなく、ワークシステムと呼ばれる作業のスケジュールを目に見える形に現したものを使用したり、マークサインを用いて意思疎通を行っていたりの工夫が見られ、学びとなった。
Cさん
附属特別支援学校を参与観察させていただき、学んだことの1つは工夫された教材である。
小学部1組では、朝の会に「かずをかぞえよう」という時間があり、決められた個数のみかんを教室中から集め、配布されているホワイトボードにみかんを貼る。一人ひとりのできること、少しサポートがあればできることを先生方が把握しているため、ホワイトボードをよく見てみると一人ひとり違うサポートがされていた。自分で個数を決め、まっさらなホワイトボードにみかんを貼る児童、数字が等間隔に並んでいてその上からみかんを貼る児童、モノクロのみかんのイラストの上にみかんを貼る児童など、発達に合わせて教材が作られていた。
その後、みんなで「かいてよもう」という時間があり、みかんの歌を歌ったり、プリントにみかんというひらがなを練習するプリント、みかんが転がっている線をなぞるプリントなど、1つの教材に対して関連するものが多く、イラストを使ってみかんがどんな見た目なのか、みかんはどう書くのかなどを学習していた。みかん1つでこんなにも教材ができることに驚いた。
また、生活単元学習ではむかしあそびをテーマに羽子板やけん玉、コマを作っていた。どこまでが元々できていて、どこから子どもたちが自分でしているかを先生に教えていただいたが、想像以上に子どもたちが自分で作っていたことを知った。このことから教材作りには実態把握がとても大切だと感じた。
専攻科目【特別支援教育臨床Ⅱ】
函館少年刑務所を見学しての感想
Aさん
刑務所のイメージとして、木工や溶接などの作業は、出所後に使用するためのお金を稼ぐという目的が大きいように感じていたが、そこには社会復帰のための訓練・生活習慣の体得といった意味合いのほうがむしろ大きく存在することが分かった。実際、我々が作業所内に入っても、黙々と作業を続ける受刑者が大半であり、その裏には日々の厳しい訓練等の成果があるのではないかと感じた。また、受刑者を社会へ送り出すという刑務官の職業上の目的は、子どもたちを卒業まで見届ける(あるいは社会へ送り出す)という学校教員の姿と重なる部分があり、普段はあまり関わることのない二つの職業に共通点を見いだすことができた。
Bさん
正直、刑務所は単なる「罰の場」だと思っていた。しかし、実際に訪れてみると、食事や運動、作業といった日常生活の中にも教育が組み込まれ、更生への意識を高める工夫がされていることを実感した。特に職業訓練では、さまざまな仕事の種類が用意されており、出所後に仕事を得て社会復帰ができるような支援が行われていると思った。
Cさん
今回、初めて少年刑務所を見学した。私は、今回の見学を通して刑務所に収容されている方の中に発達障害や知的障害のある方がいると知った。他にも、認知症のある方など通常の作業をすることが難しい人の存在を知った。また、グレーゾーンと言われる方も集団の中に紛れているのではないかと感じた。このような人が、出所に向けてどのような支援をしているのか気になった。
他にも、少年刑務所は性犯罪の教育に力を入れていることを知った。半年から一年間行われ、主にオープンダイアローグを用いたグループワークで行われていることを知った。このグループワークは、専門の先生が受刑者に対して鋭く質問し、細部まで探ることによって自己理解できると感じた。これは、刑務所内の教育だけでなく、学校現場の道徳など、クラス内での活動で活用することができるのではないかと考えた。